今回は、時計ではありません。けれども時を計測する機械です。
セイコー 機械式ストップウォッチ。
私はギリギリ当時を知ってる世代です。1980年のセイコーカタログからは機械式ストップウォッチ
が掲載されていません。すべてデジタルクォーツになります。おそらく併売もしていた
でしょうし、メーカー・お店の在庫もあったでしょうから1980年代初め頃までは普通に
使われていたと想像します。
確か小学校低学年の頃は、これを使って体育のタイム測定をしていたと記憶しています。
すごく興味があって触りたかったけど、絶対に触らせてくれませんでした。
使い終わったら、うやうやしくケースに仕舞われていました。今から考えると
腕時計よりは頑丈にできているとはいえ、精密機械ですから乱暴な子供に
触らせたくないのは理解できます。
小学校の中高学年になると、今と同じようなデジタルクォーツストップウォッチに変わっていました。
これは何度も触ったことがあります。どれだけ早く止められるか、ピッタリの数字で止める
などの遊びをしてましたね。つまり子供が遊びに使っても壊れないようになったのです。
88STは、セイコー 機械式ストップウォッチのスタンダードモデルです。特殊なモノもありますが、
基本は大きく分けて3種あります。1/5秒計、1/10秒計、100割(1/5秒計)
それぞれに、サイズの大(L型)と小(S型)、積算ボタンの有(積算)無(並)、があり
全部で12種となります。計測する種目で適切なものを選びます。
今回紹介するのは、1/10・積算・15分計・L型 です。
機能美ですよね。私が思わずこれ買っちゃったのも、この美しい文字盤に惹かれたからです。
とにかく読み取りやすいことを第一に設計されています。あざとさや見栄は皆無です。
純粋な道具はカッコいい。ミリタリー・鉄道時計もそうですね。
1/10秒計は、1周で30秒、2周で1分です。メモリを兼ねるので秒数字が、
黒文字、反転白文字で表現してあります。内側の積算計には、白黒の塗り分けが
してあり、その色と秒数字が連動していて、さっとタイムが読めるように工夫されています。
目立たないことですけど、メイン針の先端は曲げられて、積算計針には干渉せずに
できるだけ針先端をメモリに近づけて読みやすくしています。
結構厚みと重量があります。ケース径57mm、厚さ18mm。
大人の男性の手にはちょうどいいサイズです。手に馴染む感じがしてボタンも押しやすい。
裏蓋はなめらかなドーム型です。やっぱこのカタチだよなあ。見た目も良いですけど、
手のひらの当たりも優しいのです。
ACRP は、ALL CHROME PLATING の略記号。 ベゼル・胴・裏蓋すべてクロームメッキということです。
少しメッキの剥がれがあって、使い込んだ小キズもあるけど、この個体の歴史なので良いのです。
しかしクロームメッキのドームは写真撮影が難しいなあ。ブース使わずに適当に撮るとオジサンが
写ってしまいます(笑)カメラ写ってますね・・・ははは。
上位モデルの89STは、金メッキ、コート・ド・ジュネーブ15石の豪華仕様なのですけど、
この88STは高年式の廉価版なので、少々合理的なつくりです。舶来の機械ならもっとエレガントなの
でしょうけど、この無骨な機械も好ましいです。クロノグラフのストップウォッチと違って
何度も繰り返しスタート・リセットが繰り返されます。もちろん時計機能はありませんから
シンプルで頑丈なつくりになっています。
マニアには有名な話ですが、1964東京オリンピックの時に開発された、テンプにハートカムを
装着してストップ時にはかならず同じ位置で止まる機構、メモリの間に針がきても自動的に
四捨五入してメモリの真上に針が止まる機構も組み込まれています。
この機械は8800A~Eまであるようです。私の個体は1973年式で8800D。だから何と言われると
困るのですけど・・・年式のわりに新しい機械だなあと思っただけです。
1977年までは日本製ですが、1978年からシンガポール製(組立)になります。
文字盤下部の TOKYO JAPAN の文字は SINGAPORE に変わります。
役に立たない無駄なウンチクはこの辺にして・・・
さあ、思う存分ボタン押して、昔の思い出に浸ろうではありませんか。
もういくら触っても怒られないのですよ。
よーーーい。スタート!ガチン・・・カチカチカチカチカチ・・・ガチン。
こんな感触だったんだ。この機械の音が心地いいなあ。カチリ。帰零はやっ。
ぐふふふ。たまらんなあ。よし、もう1回・・・変態の夜は長い。
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