こんにちは。
今回の記事には関係のない話です。
先日、よく行く部品屋さんでガスケットを買っていたら、若い女性がお店に
入ってきました。ああ、このお店の関係者なのかなあと思っていたら。
「針押さえはありますか?」「はじめて使うのですけど、どれがいいですか?」
ん?・・・ええーー!思わず目を見開いてしまいました。
私の勝手なイメージですが、時計趣味って男だけだと思いこんでました。
私のブログ訪問者の性別は分かりませんが、コメント頂ける方々は男性ばかりだと
思ってます。しかもその女性はキレイな方だったので、針押さえという単語に
すごく違和感がありました。すいません。これも偏見ですね。
もちろん直接お話をしたわけではなく、お店の人と話してるところを見ただけです。
仕事に使うのか、趣味なのかも分かりません。ひょっとしたら専門学校の学生さん
かなあ。我が県には時計専門学校はありませんが。いやはやビックリしました。
さて、前置きが長くなりました。
今日紹介する書籍はこれです。
久下 晴夫
グリーンアロー出版社
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著者 久下晴夫氏は、セイコーに入社されますが技術者ではなく、
その後和光に転籍し時計の小売・流通に従事された方です。
技術的な話はありません。1960~1990年代の時計業界の移り変わり・実際に体験されたことを
販売側の視点で書かれています。特に1969年にセイコーが発売したクォーツ時計の
影響は業界では凄まじく、時計大国スイスも大きく変動します。その時代の業界裏事情
は興味深く、いろんな駆け引き話はとても面白い。
私は時計が好きなので、クォーツが今までの常識をひっくり返すほどのモノだと
いうことは分かっています。でもそれは今現在の時計を見たり、これまでのデータを読んだ
から理解できることです。当時の人々にはクォーツなどという新技術は得体の知れない
モノでした。販売していた人ですら理解されてませんでした。このクォーツが世界を席巻
することになるなんて誰も予想してません。想定していたのは開発技術者くらいでしょう。
この書籍は、当時のカタログや雑誌を読んでもわからない時計業界や庶民の雰囲気が
書かれています。実際にその時代に時計を仕入れ販売してきたから書けることです。
クォーツ黎明期、私はまだ生まれてもない時代なので鮮明にイメージはできませんが、
時計好きには魅力的な時代だったように思えます。
セイコーはクォーツ技術を独占せずに、むしろオープンにして他の会社でも生産できる
ようにしました。そのため各社、効率化・コストダウンが進み急激に浸透していくのです。
当然スイスも追従せざるを得ないのですが、クォーツを無視したい、機械式の復権を目指す
動きがありました。詳しい駆け引きは省略しますが、結果的に機械式時計ブームを起こし
沈んでいたいくつものブランドが復活したのです。
スイスはクォーツ全盛になっても機械式時計をつくる工作機械・製造技術を捨てませんでした。
日本は、全てクォーツ時計にしてしまい。世界トップクラスだった機械式時計を捨てました。
これが後の機械式ブームのときに効いてきます。著者は日本人とヨーロッパ人は行動原理が違う
といいます。この書籍では書ききれなかったようですが、もっとこの話は読みたかった。
ヨーロッパの町並みは、統一感があり美しい。伝統が守られることが当たり前なのです。
日本でも伝統的建造物群保存地区など一部では保存する動きがありますが、それ以外では
昔ながら伝統建物集落でも平気で洋風プレハブ住宅を建てたりします。良くも悪くも日本人は
こだわりがなく新しいモノにも抵抗がないのです。
本書の引用ですが、“日本人は高級な消費生活を目指す時に、なぜ、よく知られた高価な
ものを買おうとするのか、またなぜ、大勢の人たちと同じものを持ちたがるのか、
この日本人消費者性向は、あと何年かで変わるのか変わらないのか・・・”
著者は、高級時計を販売しながら、ずっと思い続けたようです。
私は高級品には縁がないので、論じる資格はないのかもしれませんが、
雑誌やネットでは、いつも同じブランドの話題をひたすら繰り返してます。検索ヒットする
キーワードも上位になりますから、ますます情報が回されていくのです。
わかりやすいブランドは虚栄心が満たされる。と書けば簡単ですけど、著者は行動原理の
違いからくる性向を考えて続けていたのだと思います。
THE SEIKO BOOK や
国産腕時計博物館 とは全く違う切り口で、時計の歴史を学ぶ
ことができます。私は舶来時計のことは詳しくないので、初めて知ることも多かった
です。業界人ならではの話も、盛り沢山なので楽しめると思いますよ。
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