
久々の時計紹介です。
随分前に手に入れた時計ですが、ようやく整備が終わりました。
リコーの時計は資料がほとんどありません。トンボ出版の国産腕時計シリーズ
タカノ/リコーは、ISBNは取得されてるけど、いまだ出版される気配はなさそうです。
カタログや整備要領書なども昔からある時計店にはあったのでしょうけど、市場に
出回ることはほとんどありません。セイコーやシチズンのようにシリアルナンバーから
製造年月もわかりません(ある程度想定はできるけど)。とにかく無い無い尽くしで、
リコーを知るためには現物を集めるのが一番手っ取り早いのかもしれません。
私が好きなダイナミックワイドシリーズの最高級モデルです。
ダイナミックワイドは石の数でグレード分けされてます、曜日カレンダーが6時位置の21石、
曜日カレンダーが12時位置の25石、日付早送りボタンがついたデラックス30石、さらに
フラッシュチェンジがついたハイデラックス35石となってます。
多石競争は昔の話。私も石の数は気にしません。しかし当時のメーカーは多石モデルに
力を入れていたので、面白いモデルやカッコいいモデルが多いのも事実。力入れすぎて過剰
装備でやり過ぎデザインもあったりします。いまだにマニアは欲しがる人も多く価格も高い。
リコーは、セイコーやシチズンのように売れたメーカーではないので、現存数も少ないです。
このハイデラックスは、1967年当時価格は17,000円でした。45キングセイコーと同じ価格帯です。
市場には滅多に出てきません。ヤフオクでは1年に2~3本くらいの感覚ですね。
しかしリコーマニアは、その他メーカーほど多くないので、競り合うこともなく安く落札できます。

前置きはこの辺にして。
初期のダイナミックワイドのロゴフォントは筆記体なのですが、このハイデラックスだけは
クラシカルで重厚なフォントが使われます。これがカッコいいのですよ。
ハイデラックスは私の知ってる限り、4種の文字盤があります。
・ペンシル針(黒ライン)、バーインデックス(黒ライン)
・短いバー針(先端のみ黒縁)、立体テーパーインデックス(黒ライン)
・ペンシル針(シルバー)、短いバーインデックス(シルバー)、ベゼル黒ライン
・平型ドーフィン針(シルバー)、バーインデックス(シルバー)
いずれも白色の文字盤しかありません。
私が欲しかったのは、ドーフィン針のモデル。かなりセイコーを意識した形ですけど、
好みなので抗えないです。気になる長さも申し分ありません。
デラックスとハイデラックスは日付カレンダーが6時位置に配置されます。
サイクロップレンズはあまり好きではありません。削り落とそうかと思いましたが、
貴重な純正プラ風防なので、予備が手に入るまで加工はできません。

このボックスプラ風防の雰囲気が良いのです。表面張力が大きい水のように外周部が
揺らめくのがたまりませんね。プラ風防は磨けばキズが消えて光るけど、この風防は
キズミでよく見ると微細なヒビが入りかけてます。ガラスのように寿命が長くない
ところが悩ましい。
ハイデラックスは、フラッシュチェンジ(カレンダー瞬間早送り)の機能があります。
深夜0時になる(長針が12時に届く)瞬間に、日付・曜日カレンダーが変わります。
夜中に時計を使うことはあまりないので、ゆっくりと変わっても良いのですが、
この一瞬で変わる動きは見ていて気持ちいいですよ。この機構にかなりコストが掛かって
るのでしょうね。私の個体は曜日カレンダーがズレてます。職人さんに調整してもらった
のですが、これが限界と言われました。

ケース2時位置に日付早送りボタンがあります。
21石・25石の機械は、リューズ2段引きで日付早送りという特殊機構なのですが、
30石・35石はオーソドックスなボタン方式なので使いやすいです。
カチャリと金属音がして節度ある押しごたえのあるボタンは心地よい。

ベゼルは放射状にヘアラインが入り、角はポリッシュ仕上げと凝っています。
過剰は装飾ではなく、一見地味だけど実はこだわった加工がしてあります。
角度を変えると控えめに光を反射して美しい。高級時計はやたらとギラギラしがち
ですが、このくらいが好ましいですね。
ケースはポリッシュ仕上げで、シンプルな形状です。まだ手仕事が残ってる時代なので
エッジもビシッと立っています。ラグの小さな面は治具無しで研磨すると、あっという間に
丸くなっちゃうので、多少のキズは目をつぶって最小限の研磨に抑えています。

ずっと欲しかった時計を手に入れることができました。
今日から使い始めてますが、用もないのにチラチラと眺めてはニヤニヤしてます。
万人にオススメできる時計ではありません。でも気になった方は是非覚えておいて
ください。もしまた出会うことがあれば、それは運命の出会いですよ。
手に入れるしかありません(笑)
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